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巨大地震に伴う長周期地震動の特性と超高層ビルに及ぼす影響

EHS&S研究センター長 赤木久眞
EHS&S研究センター上級研究員 建築構造技術本部長 中野時衛
構造コンサルティング部係長 木下昌彦
(現)NTTファシリティーズ中央 構造エンジニアリング部門主査

概要:
 平成23年3月11日(金)14時46分頃、三陸沖を震源地とする2011年東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9.0)が発生した。地震の規模は世界最大級であり、東北・関東地方の広域にわたって震度6〜7の激しい揺れが生じ、また太平洋岸では高さ10mを超える巨大な津波が発生して、住宅、ビル、工場、道路、港湾、空港など多くの施設が被災し、死者・行方不明者は2万人を超え、福島の原子力発電所では放射能漏れの危機も起こり、東日本大震災と呼ばれるに至っている。
 この地震により、東京では震度5強を観測し、ゆっくりと長く水平方向に揺れ続ける長周期地震動が都心の超高層ビルを襲い、重大な構造被害はなかったが、複数のビルで非構造材や各種設備等の損傷が発生した。その発生の切迫性が予測されている東海地震における首都圏の揺れは、震源からの距離も近く、今回経験した揺れより大きいと推測される。東海、東南海、南海地震が連動しても同じような規模の巨大地震になることが予測されている。
 本報では、東海・東南海連動型の巨大地震による長周期地震動を予測し、それによる東京と名古屋に位置する超高層ビルの揺れ(床応答)の特性を地震応答解析により求め、その結果を用いて長周期地震動を受ける超高層ビルに生じる被害を予測して、超高層ビルの構成要素に対する長周期地震動対策は如何にあるべきかを示し、今後の課題についても言及する。

地球環境問題と省エネルギー手法に関する考察

取締役 EHS&S研究センター上級研究員 建築FM技術本部長 情報システム技術本部長 大島一夫

概要:
 地球温暖化、生物多様性の減退、砂漠化、森林減少、海洋汚染、オゾン層破壊等、地球規模の様々な問題が引き起こされているが、この原因は、急増した人間の経済活動に起因している。
 産業革命以降、二酸化炭素の排出量が急激に増加して地球の平均気温が上昇しているという指摘がなされた。一方で、地球の気候は、地球軌道の変化、太陽活動や宇宙線の影響を受けているとの主張もあり、議論が続けられている。地球温暖化の原因にはこのように議論があるが、化石エネルギーは有限であり、大事に効率よく使用することが求められる。
 エネルギー消費量は経済成長が進むにつれて増加し、今後も世界のエネルギー需要は、途上国の経済成長とともに着実に増大すると予測されている。国内のエネルギー消費量の伸びは現在では横ばいになっているが、業務その他部門、家庭部門のエネルギー消費は増加を続けその対策が求められている。事務所・ビルのエネルギー消費量の増加は床面積の増加が原因であるが、延べ床面積あたりのエネルギー消費量が減少していないことからこれを減らす必要がある。このため各種法規制が強化されている。
 建築物のエネルギー消費量を削減するためには、外界からの負荷を小さくすること、建築設備の効率を高めること、内部負荷を小さくすること等が必要である。最近では、単一のビルに閉じない、電気、熱、未利用エネルギーの面的利用等によるスマート・コミュニティへの取り組みも始まっている。
 ここでは、地球環境問題の現状を述べるとともに、この中から地球温暖化対策に焦点をあてて、地球温暖化や気候変動の要因、エネルギー消費量の増加状況、施設の省エネルギーや温室効果ガス排出量規制に関する動向、施設における省エネルギー手法について紹介する。

さまざまな計測センサの特徴を活かした環境性能の「見える化」

EHS&S研究センター上級技師 環境技術部係長 三野洋介

概要:
 21世紀は環境の世紀、と言われるように、私たちは日々、この「環境」とともに暮らしている。私たちは「環境」と上手に付き合うために、現在の「環境」を総合的に把握・認識し、次の行動を考えなくてはならない。CASBEEと呼ばれる建物の環境性能評価手法では、可能な範囲で計測を行い、建物の新築や運用、改修の各段階における評価を行うこととしている。これは、デミングが提唱したPDCAサイクルを実践した例であるが、この3段階目に相当する"Check"、つまり、「評価」の部分で行うのが「計測」である。私たちは「計測」というプロセスによって、様々な「環境」を「見える化」し、正しく評価することで、無駄のない快適な世界を築いて行こうとしているわけである。
 本稿では、「計測」について、その位置づけを示し、いくつかの温度センサやそれらの応用製品の特性について述べた上で、それらを使った計測例を紹介した。

有機系太陽電池の現状

EHS&S研究センター上級研究員 バッテリー技術部課長 山下 明
システム技術部 平岡真実

概要:
 1991年に有機色素を用いた色素増感太陽電池が登場してから20年が経過し、変換効率は既に10%を超えて、実用化間近と言われている。これは本多、藤嶋の発見した二酸化チタン(TiO2)半導体光電極を応用した新しいタイプの太陽電池である。当初は色素としてルテニウム錯体が使われてきたが、最近では低コスト化のためルテニウムを使わない色素も現われ、同等以上の性能を示すようになってきている。また、より広い波長領域の光を利用するため、複数の色素を組み合わせて用いる方法も開発されてきている。構成材料も当初のガラスからプラスチック、フィルムへと低コスト化が図られている。同じく有機材料を用いた有機薄膜太陽電池も最近開発が進んでいる。
 色素増感太陽電池はシリコン等の従来型に比べて弱い光でも発電でき、入射方向依存性が小さいのが利点とされており、そのため曇りや雨の日の散乱光でも高い効率で発電できると期待されている。実用化されれば、これまで不可能であった冬の日本海沿岸での自立型電源の実現などに貢献することが期待される。本稿では、これら有機系太陽電池の現状について報告する。

RFIDタグを用いた鍵管理システム・図書管理システムの開発

ユーザシステム開発部担当部長 俣江重隆

概要:
 重要物品や重要書類の管理については、従来から施錠できる保管庫に入れ、記帳による貸し出し管理が行われているケースが多いが、記帳の不徹底による紛失等の可能性が高いという課題がある。
 これに対しRFIDタグを用いたシステムの採用により、管理対象物に貼付したRFIDタグをループ型アンテナで常時監視する機能とICカードによる認証を組み合わせることで、管理対象に対して「いつ、だれが、なにを」という基本的な項目を自動的かつ一元的に管理でき、安全性の高い正確な管理が可能となる。
 ここでは、RFIDタグを利用した鍵管理システム、図書(重要書類)管理システムの概要、システム・機能を実現する仕組み、性能の向上方法、導入事例について報告する。

クラウドの利用に見るハイパフォーマンスコンピューティングの現状

ユーザシステム開発部課長 森谷靖彦

概要:
 建築建設分野においても、ここ数年で急速にデジタル化が進み、設計段階ではCAD (Computer-Aided Design) から BIM (Building Information Modeling) への移行が加速、施工段階では様々な工法が開発されて建物の性能を向上させ、維持管理段階ではクラウドコンピューティング (cloud computing) の活用が始まっている。
 本稿では、クラウドコンピューティングについて建設業界における利用方法を整理し、こうした技術を支えるサーバ技術、特にHPC (High Performance Computing ) と呼ばれる高性能コンピュータの現状について考察する。

BIMの動向とFM分野における活用に関する考察

EHS&S研究センター上級技師 DBソリューション部担当部長 松岡辰郎

概要:
 BIMは日本においては2009年以降急速に普及している。国土交通省は2010年度より、発注者の立場からプロジェクトにおけるBIM利用を始めた。BIMに関するセミナーやシンポジウムも盛んに開催され、情報共有や議論が活発に行われるようになっている。建築生産の場ではBIM導入が進んでいるが、反面、「ソフトの価格が高い」といった課題もある。意匠・構造・設備といった分野横断的なIPDはまだ本格的には実現しておらず、導入による業務フロー改善プロセスも最適化には至っていない。
 BIMをコンピュータ内の仮想建築として考えれば、建築生産だけではなく、ライフサイクル全体の業務で活用できるが、FM分野におけるBIM利用は導入期に入った状態であり、経営的視点からの活用はようやくスタート地点に至ったといえる。今後FMにおいてBIMを活用するための課題としては、事業モデルを元にした施設の情報化、属性データとイニシャルコストの適正化、情報の適正な開示と共有、情報品質の確保、適正なツールの整備といったことがあげられる。
 ここでは、日本における現在のBIMの状況を整理し、FMにおける活用の可能性と課題について考察する。

パワーエレクトロニクスにおける解析シミュレーション

エネルギー技術部長 山崎幹夫

概要:
 パワーエレクトロニクスとは電力制御素子を用いた電気回路によって電力変換をおこなう技術の総称である。パワーエレクトロニクスは「取っ付きが悪い」と言われるが、電気回路であり、数学的に取り扱うと意外と判り易い。
 本報では、電源回路は状態方程式によって表現できること、その状態方程式は状態変数が高々2個であり、比較的容易に解くことができること、実測と計算との誤差を少なくするには、回路や素子の寄生要素を等価回路内で正確に表現する必要があること、寄生要素を考慮すれば計算と真値との相対誤差を10%以下にすることも可能であること、しかし寄生要素を詳細に表現すると解析式が煩雑になり式の計算に膨大な時間を要するようになること、この問題を回避するため、汎用回路解析プログラムを利用し回路動作を数値計算によりシミュレート可能であること、回路シミュレーションにより、より複雑で高精度な解析が可能になり、電源回路だけでなく、電力変換装置から給電系に至るまで、多くの分析設計が容易になることを示した。

市販リチウムイオン電池の釘刺し試験法に関する考察(その2)

バッテリー技術部 磯部武文
バッテリー技術部担当部長 市村雅弘
EHS&S研究センター上級研究員 バッテリー技術部長 荒川正泰

概要:
 リチウムイオン電池は高いエネルギー密度や優れたサイクル特性を有することから,携帯機器に利用され需要が拡大してきた。最近では電気自動車やハイブリッド自動車用の電源などに利用され注目されている。電池を利用する上でユーザーが求める電池は,性能に優れた電池や値段が安い電池,信頼性が高く安全な電池である。我々は電池の安全性に注目し,リチウムイオン電池の安全性試験を行ってきた。特に内部短絡状態を模擬する釘刺し試験は、電池の安全性を検証する上で最も基本的な試験である。
 本稿では、釘刺し試験よりも実際の内部短絡の状況に近く,かつ簡便に実施することができる試験方法を提案した。条件を変えて行った試験結果から内部短絡の防止に役立つ試験方法であることが確かめられた。

建築物の非破壊検査とその探査限界について

環境技術部担当部長 近藤友厚

概要:
 既存建物の改修工事において、電線管やケーブルの切断事故を未然に防ぐため、床、壁の開口工事前の事前探査として、また、敷地掘削前の事前探査として、当社ではいち早くX線探査、レーダー探査等を導入し、サービスを提供してきた。X線探査は、コンクリート内部の埋設物(鉄筋、電線管等)を特定できる点において、他のどの探査手法よりも優れているが、探査可能なコンクリート厚に制限がある。レーダー探査は、電磁波を利用して埋設物(鉄筋、電線管等)を検出する手法で、X線以上に一度に大量の面積、深さを探査できるという利点を有するが、埋設物の種類の特定が出来ない。
 本報告では、X線探査、レーダー探査の概要、これらの探査限界及び探査限界を補う判定基準について紹介する。なお、探査対象物は、コンクリート、地中(敷地構内)に限定し、埋設物は、鉄筋、電線管、ケーブルに限定する。

市場戦略サービスの開始と実施例

市場戦略サービス部長 杉浦正爾

概要:
 クラウドコンピューティングが本格化し企業を取り巻く情報環境は大きく変わりつつある。企業が市場戦略を立てるにあたって収集し分析すべき情報は膨大で、その範囲も業域や国境を越えて拡大している。当社では、従来からNTTファシリティーズグループの市場調査業務を担う中で、ICTファシリティー分野を切り口に多くの情報を蓄積し、専門調査会社とのネットワークを構築してきた。これらを生かし、グローバル化が進むICTファシリティー・エネルギー業界の中で新たなマーケティング支援業務展開を目指し、2011年4月1日より、旧メディアソリューション部が市場戦略サービス部へと改編された。その目的は、コンテンツ重視のメディア企画制作からお客様事業価値を高める上流工程のマーケティングコンサル事業への転換にある。
 市場戦略サービス部の業務内容は、マーケティング、ブランディング、販売営業コンサルティング、顧客ニーズに合わせた情報抽出・分析・レポーティング、メディアソリューションサービス、技術情報誌・パンフレット作成などである。その具体的内容について、コンサルティングリソースの側面とこれまでの実施サービス例から紹介する。