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大規模災害に備えた情報通信電源リスクマネジメント

EHS&S研究センター上級研究員 エネルギー技術部担当部長 室山誠一
取締役 EHS&S研究センター上級研究員 通信エネルギー技術本部長 山下隆司

概要:
 情報通信システムは現代社会のインフラストラクチャの一つであり、システムにより提供される各種のサービスは一時の停止も許されない。そのため情報通信システムに電力を供給する情報通信電源システムに対しても、非常に高い信頼性が要求されている。
 情報通信電源システムは商用電力を受電し、情報通信システムで必要な電力に変換するとともに、商用電力が停電しても給電が途絶えないようにするためのバックアップ電力源を備え、高品質、高信頼な給電を実現している。しかし、2011年3月の東日本大震災により発生した原子力発電所の事故により、我国の商用電源の供給力が脆弱になり、情報通信電源システムに対しても大きなリスク要因となっている。
 これまで情報通信電源システムは商用電源の停電確率等を考慮した規模別信頼度設計手法に基づき、高い信頼度を維持できる設計を行ってきている。しかし、商用電源の供給力不足により大規模な停電が発生する可能性が増し、情報通信電源システムはその商用電源の弱体化に対応する、すなわち電源システムを強靭化するための技術開発、導入が必要になっている。
 商用電源の弱体化に対応する技術としては、情報通信電源システムの構成から、次の3点が考えられる。すなわち、分散型電源の一層の増強・活用、蓄電池などバックアップ電源の強化・長時間化、さらに分散型電源、バックアップ電源、電力を消費する負荷を統合的に制御するスマート制御技術である。これらの技術について、現在の開発状況を紹介し、課題を述べた。主な課題としては、以下の3点があげられる。
(1)電力源強化に関しては、これまでの分散型電源は商用電源との連系運転を条件としたシステムが普通であったが、災害時における自立運転機能の開発が重要な開発項目としてあげられる。
(2)バックアップ電力源強化では蓄電池の小形、軽量化とともに、繰り返し充放電に強い蓄電池の開発が必要である。
(3)スマート制御技術では、情報通信電源システムの信頼度を維持するために自律分散制御を維持しながら分散電源、蓄電池、需要削減などが行える制御技術の開発と、ビル間での電力融通技術の開発が必要である。

企業価値を高めるリスクマネジメント(ERM)の考え方

取締役 EHS&S研究センター上級研究員 建築FM技術本部長 情報システム技術本部長 大島一夫
環境技術部係長 寺島 克

概要:
 企業を取り巻くリスクは多様であり、およそ企業活動のあるところには必ず何らかのリスクが存在している。加えて、昨今の経営環境の変化により、企業が直面するリスクは巨大化、多様化、そして複雑化している。このような環境下で、リスクの認識や管理が不十分であると、企業の目的や目標の達成はおろか、企業経営に重大な損失や影響をもたらし、企業の存続も危ぶまれるケースまでも発生することがある。企業を取り巻くさまざまな法令や規制、基準が制定、強化されてきたことも、リスクマネジメントへの取り組みが企業にとって不可欠なものとなった背景といえる。
 従来から企業では重要と思われる個別のリスクに対して管理体制を構築してきた。しかし、リスクの発見から対応まで部門の中で実施され、その多くは部分最適に留まっていた。このような部門別リスクマネジメントでは、企業が組織的にリスクに対応するための体制や情報の流れが整備されていない場合が多く、一旦リスクが発生すると、さまざまな問題が顕在化する可能性がある。
 部門別リスクマネジメントの限界や経営環境の変化に対応するため、リスクを全社的視点で合理的かつ最適な方法で管理する全社的リスクマネジメントの必要性は高まっている。本稿では、その基本的な進め方とそれぞれのプロセスにおける実施内容と留意点を示す。実施に際しては、企業の規模、事業内容等の特性を勘案し、手順や実施方法を創意工夫することが必要となる。
 企業は従来の想定を超えて起こり得る、さまざまな分野のリスクに対応していかなければならない。リスクを全社的視点で合理的かつ最適な方法で管理する「全社的リスクマネジメント」が、その有効なアプローチであると考える。

防災情報ハザードマップとその最新動向

建築FM技術部主任 坂巻 哲

概要:
 三陸沖を震源とした2011年東北地方太平洋沖地震による大震災、紀伊半島を中心にした2011年台風12号による集中豪雨や土砂災害など、日本ではその地理的条件からさまざまな自然災害が発生している。
 国や地方自治体は、災害防止力の向上のため、被害想定区域や避難場所等を記載するハザードマップを作成し、急速にその整備を図り、ハザードマップを利用することで、災害による被害の軽減、災害発生時の円滑かつ迅速な避難、また二次災害発生予想箇所の回避が図れるとしている。
 本稿では、近年、防災情報として普及しつつある主要なハザードマップの紹介とその動向や活用方法について報告する。

ICT装置等の振動試験規格について

耐震構造技術部長 奥田賢持

概要:
 電子装置の振動試験規格に関する規格には、環境振動に関する基本的な試験方法を定めている規格から、地震による振動や輸送に伴う振動など特定の外乱に対して定めている規格など様々な規格があるが、国際的に制定された規格のほか一部の国や地域で制定された規格も数多くあり、これらのローカルな規格を世界に通用するグローバルな規格にするという標準化活動は国際的な競争力を確保するためにも重要な課題である。
 本稿では、地震による振動、鉄道車両や自動車の走行に伴う振動、および、輸送時振動を対象とした電子装置の振動試験規格における国際規格と国内外規格との関わりについて紹介している。

市販リチウムイオン電池の釘刺し試験法に関する考察(その3)

バッテリー技術部 磯部武文
EHS&S研究センター上級研究員 バッテリー技術部長 荒川正泰

概要:
 リチウムイオン電池は高いエネルギー密度を有することから、携帯機器用電源として広く普及し, EV、HEVと言った電気自動車用の電源としての利用が主に検討されてきたが、通信ビルの停電時のバックアップ用電源など,鉛蓄電池に替わる定置用の蓄電用途としても注目され始めている。特に2011年3月11日に発生した東日本大震災以降、家庭用のバックアップ電源や,太陽光発電や風力発電など出力変動が大きく不安定な自然エネルギーの出力安定化や発電できない場合のバックアップ電源としての用途にも注目が集まっている。一方でリチウムイオン電池はエネルギー密度が高く可燃性物質を使用しているため、これまで何度も発煙・発火事故が報告されており、その安全性を確保することが必須な電池である。
 これまで我々は電池の安全性において、電池パック等における保護回路では回避できない電池の内部短絡に注目し試験を行ってきた。内部短絡に対する耐性を評価する簡便な試験として釘刺し試験が行われているが、釘刺し試験では試験パラメータを変化させることで異なる試験結果が得られることが分かったため、我々は先端が球形をした釘(Blunt Nail)を用いて試験を行ってきた。今回はBlunt Nail試験の有効性を更に検証するため、JIS規格で規定されている強制内部短絡試験との比較を行った。本論文では第52回電池討論会で発表した内容を基に最新の試験結果を紹介する。

有機太陽電池への期待と最新技術動向

EHS&S研究センター上級研究員 バッテリー技術部課長 山下 明
システム技術部 平岡真実
(現)NTTファシリティーズ 事業開発部 ITビジネス部門

概要:
 1990年代の初めに登場した色素増感太陽電池は、20年以上経過した今日、実用化段階に達しつつある。色素増感太陽電池は低価格が期待でき、弱い光でも発電できる、軽量である等の長所を有する反面、直達太陽光下での発電効率がシリコン等の無機系太陽電池に比べて小さく、期待寿命も短い等の短所があり、適した環境に限定した利用が好ましいと考えられる。NTTファシリティーズ総合研究所では、光ディスク型の単セルを多数直並列に接続することにより、持ち運びができてかつ大出力の太陽光発電装置を実現させようとしている。また期待されているように曇りや雨の日でも比較的高い効率で発電できることを実証するための測定を開始した。

FMイノベーションを促すICTの最新動向

EHS&S研究センター上級技師 DBソリューション部担当部長 松岡辰郎
(現)NTTファシリティーズ 研究開発本部 アドバンスFM部門 主任研究員
DBソリューション部長 原田倫孝

概要:
 近年のICTの急激な進化と拡大は、今後FMにも影響を与えると考えられる。今後のFMとICTとの関係を予測するためには、両方の動向を把握しつつ、相互の影響を考慮する必要がある。
 本稿では、最近のICTの動向を挙げ、今後のFMに与える影響について考察を試みた。ICTの動向については、「クラウド」「モバイル」「ビッグデータ」「ソーシャルコンピューティング」という4つの大きな流れがある。
(1)クラウド
 プライベート・クラウドやパブリック・クラウド、ハイブリッドクラウド、インタークラウド等、概念や形態が広がっている。また、クラウドに関連する標準化の動きが近年世界的に活発化している。
(2)モバイル
 近年のスマートフォン、タブレットPCの急激な普及はモバイルコンピューティングの概念をも大きく変え、モバイルの可能性を広げた。現在、モバイルの分野ではBYODとMDMが注目されている。
(3)ビッグデータ
 ビッグデータは、従来のデータベースでは扱うことが困難な規模の巨大なデータの集まりと、その活用技術を指す。従来の方法では発見できなかった分析を可能とする。一方、目的に応じたデータを収集する手段の確立と、専門知識を持った要員の早期の育成が課題となっている。
(4)ソーシャルコンピューティング
 実例としてFacebook, Twitterが知られている。アプリケーションUIの個別化が可能になったことも重要である。
 今後ICTは「大量のデータを活用した新たな知見の取得と、自由度の高い情報共有ができる」環境が充実する。また、機能の高度化よりもデータ自体がより重要な要素となっていくと考えられる。ICTをFMで活用していくには、「より高度なファシリティのモデル化」「センシング技術の高度化と連携」「ファシリティに直接関係ないとされていた情報との連携強化」「情報利用サイクルの確立」が課題となる。

モバイル端末を使用したシステム構築の動向

システム技術部主任 大前博敬

概要:
 近年、高性能なモバイル端末が販売され、さまざまな方面での活用が始まり、注目を集めている。
 Windows OSを使用した端末は、Windows7の発売を契機にタッチパネルを採用したノートPCや、キーボード、ポインティングデバイスを持たないスレートPCが続々とリリースされ、業務で使用するPCにWindowsが多いことやWord、ExcelなどのOffice製品を使用する機会が多いことから支持されている。また、Android OSやiOSを使用した端末は、スマートフォンやタブレット(スレートPCとほぼ同義)の普及が著しく、3G回線を武器にシェアを伸ばしている。これにより、モバイル端末の開発だけではなく、ICTを利活用するツールとしてシステムの開発も活発化している。
 本稿では各モバイル端末の特徴を整理し、モバイル端末を使用したシステム構築やセキュリティの動向などについて述べる。

ICタグを用いた鍵管理システム

ユーザシステム開発部担当部長 俣江重隆

概要:
 フィス内のロッカーには多くの情報資産(顧客情報、開発情報等)が収容されている。また、施設内の扉には必ずしもカードキーなどが装備されているわけではなく多くの扉は、メカニカル鍵が使用されている。これらの情報資産や施設内の区画のセキュリティを守るためには、ロッカーの鍵や区画に入るための鍵を適正に管理する必要がある。
 そこでICタグを用いた「いつ、誰が、どの鍵を持ち出し、いつ返却したのか」などの記録を残すことができる鍵管理システムを開発した。鍵管理システムの導入により管理者の負担を軽減しながら厳正な管理が可能となる。ここでは、鍵管理システムの概要について紹介する。

建築設計分野におけるBIMの発展と可能性

ユーザシステム開発部課長 森谷靖彦

概要:
 BIM元年と言われた2009年から3年が経過し、BIMによって日本の建築生産システムはどのように変化したのか。本稿では、BIMのメリットを再確認し、他の専門システムとの連携の観点からその有用性を検証する。
 特に日本建築積算協会の取り組みを例に、中間ファイル方式によるシステム連携の可能性を探りながら、具体的なデータ連係手法を紹介する。
 さらに、建物のライフサイクル全般にわたって長期間利用されるBIMデータの権利と責任の所在についてもふれ、BIMと他システムとの連携方法について考察する。

東日本大震災以降のファシリティ関連市場動向

市場戦略サービス部長 マーケット開発部担当部長 杉浦正爾
市場戦略サービス部主任 マーケット開発部主任 武田史人

概要:
 2011年は、3.11東日本大震災がファシリティ関連市場にも大きな衝撃与えた。震災そのものに加え、その後続いた電力不足がデータセンター、ビル省エネ市場に大きな影響を及ぼした。震災復興プロジェクトとスマートシティが結びつき、各地で構想が立ち上がった。原子力発電の安全性が問い直されるなかで、メガソーラー計画が次々と具体化。太陽光発電パネル架台の材質も、鉄鋼製からアルミ型へ,さらにGFRP製へと、軽量化による工期短縮、コスト削減、耐久性を目指す架台が出現した。市場は欧州から日本へとシフトしており、海外のシステムインテグレーターが、日本の市場を狙って動き出している。価格競争に苦しんだメーカも自らメガソーラーを建設し、それを投資家に売却して投下資本を回収し維持管理を受託するなど、新たなビジネススキームを目指すケースが増えた。システムの遠隔保守を行う会社が、太陽光発電の販売、設計、施行、保守監視を行うビジネスを始めているところもあり、運営管理や保守点検まで含めた総合力が問われている。
 スマートコミュニティでは、防災と省エネに配慮した街づくりが大きなテーマとなっている。国内メーカは、高付加価値製品の開発で競争優位を確保する方向を取ろうとしている。蓄エネでは、災害時の対応を鑑み、太陽光発電、コジェネ・燃料電池と蓄電池の組合せの人気が高く、新築マンションでは標準化しつつある。大容量の蓄電池ではNAS電池があるが、安全性が不安視され、それに代わる大容量の蓄電池開発が求められている。この夏も昨年同様の電力不足と節電・自家発電需要が想定される。そして、いよいよ東北各地での震災復興とあわせたエコタウン・エコシティが動き始める。
 データセンターの設置場所も、震災後、見直された。関東に7割という一極集中のデータセンター配置は、計画停電の影響を受け、災害対応の点でも問題視された。また、BCP対応として、クラウド技術で仮想化、分散化してバックアップするサービスが注目を集め、西日本でのデータセンター需要が急増した。
 データセンターでは、床面積あたり電力消費量は一般的なオフィスビルの3倍を超える。電力不足の流れからも、外気冷房などを大胆に取り入れる機運が高まった。データセンターは、ますます海外での建設需要が増えると予測される。これまでとは全く異なる市場での対応が求められるだろう。
 電力不足・料金値上げの問題は省エネ・節電需要に拍車をかけるが、蓄電池・自家発電・燃料電池に行政が助成金を出す動きもあり、市場の伸びに注目したいところである。