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地球温暖化対策の取り組みと低炭素建築

EHS&S研究センター上級技師 塚田敏彦

概要:
 地球温暖化は人類の生存を脅かしかねない深刻な問題であり、二酸化炭素の排出は人間活動のあらゆる場面に起因しており、その解決にはすべての主体の参加による広範な取り組みが必要となる。 我国では地球温暖化対策の推進について、官民を挙げた取り組みを多方面から強力に実施してきている。
 筆者は2012年4月より環境省 地球環境局 地球温暖化対策課において、環境行政に携わっている。それまではNTTファシリティーズにおいて建築設計に携わり、6年前より建築の環境性能を今後さらに高めるには、 ICTの利用が重要であるというメッセージを込めたGreenITy Buildingの推進を行ってきた。
 本稿では今後より一層の推進が必要とされる温暖化対策について、我国における環境行政や建築物に関わる施策の動向と、低炭素建築への考察を述べる。
 環境行政や建築物に関わる施策の動向としては、国連気候変動枠組条約の経過を踏まえた国際交渉状況、京都議定書第一約束機関における温室効果ガス6%削減達成見込み、 2050年までに1990年比80%削減に向けた都市や建築の中長期ロードマップ、2050年における社会像や低炭素化がもたらすメリットを紹介している。
 低炭素建築への考察としては、建築のライフサイクルや関係者ごとに広範な低炭素化項目を分類したうえで、企画計画段階の重要性、統合設計の重要性、運用段階の重要性、 感性や心理的効果の利用、自然エネルギー利用における設計と運用の連携などについて述べている。

建築物の建設に伴うエネルギー消費に関する分析手法および削減手法について

EHS&S研究センター研究主任 環境技術部主任 海藤俊介

概要:
 建築物のライフサイクルにおいて消費されるエネルギー消費量の内、建設に伴うエネルギー消費(内包エネルギー)と運用に伴うエネルギー消費の割合が大きい。
 近年のZEB(Net Zero Energy Building)や節電の取り組みから、省エネ化がますます促進すると考えられ、将来的に運用エネルギーの割合が建築物のライフサイクルにおいて相対的に縮小していくと予想される。 したがって、建設に伴うエネルギー消費について現在よりもさらに削減が求められていくと考えられる。
 本稿では天然資源消費低減、エネルギー消費およびCO2排出低減の観点から、建築物の建設段階から遡った建築部材の製造過程や輸送などを含めた建設時までに消費するエネルギー消費に着目し、 その分析手法、削減方法について紹介する。
 建設に伴うエネルギー消費(内包エネルギー)の分析方法には、大別して積み上げ法と産業連関分析法がある。算出における境界条件(バウンダリー)がそれぞれ異なるため分析の際には注意が必要である。
 建設に伴うエネルギー消費(内包エネルギー)の削減方法として以下の方法が考えられる。
(1) 建築部材の製造・輸送の効率化
 今後、再生可能エネルギーの供給割合が高まり、化石燃料依存率が低下することが予想される。化石燃料依存率の低下に伴いCO2排出係数が低下することで、 建築部材の製造におけるCO2排出の削減や電気・天然ガス自動車による輸送CO2排出削減が予想される。
 製造工場ではエネルギー変換効率が高いボイラ等の設備更改などで効率化を図ること、輸送の面では地産地消により輸送距離を短縮することで建築部材の内包エネルギーおよび内包CO2を削減できる。
(2) 設計時のLCA評価
 設計段階においてLCA評価を行い、内包エネルギーを試算することが重要となる。 また、スケルトンインフィルのように建築物の耐用年数を長期に設定することで単位年当たりの内包エネルギー及び内包CO2を低減することが可能である。
(3) 使用部材量の削減
 建築物の内包エネルギーおよび内包CO2は使用部材量に伴い増加する傾向にあることから可能な限り使用部材量を抑えることが肝要である。 また、内包エネルギーおよび内包CO2原単位の低い部材を選定することも重要である。
 内包エネルギーは、製造や輸送エネルギーといったプロセスを遡ったエネルギー消費を含むため、運用エネルギーと比べてエネルギー消費量を評価しにくい面がある。 しかし、削減の余地が大きいことから今後ますます削減に対する取り組みが進められていくと考える。

情報通信用給電システムの変遷と今後の課題

取締役EHS&S研究センター上級研究員 通信エネルギー技術本部長 山下隆司
EHS&S研究センター上級研究員 エネルギー技術部担当部長 室山誠一
エネルギー技術部長 山ア幹夫

概要:
 情報通信サービスの進展に伴う通信設備の変遷と,それに対応する給電システム技術の変遷と今後の可能性について述べた。
 最初に情報通信用給電システムの基本構成を示し,交流給電と直流給電の比較に基づき,直流給電が信頼性や給電効率で優れていることを示した。 次に、通信用給電システムの主流である直流給電システムについて,整流装置の変遷と,それに関連した集中給電から分散給電への流れ,ラック内給電方式の変遷について述べた。
 さらに近年のIP系装置の導入に伴う信頼度の考え方の変化や,ラック当たりの消費電力が増大することによる給電系の課題を示し,給電系を安定動作させるための条件や, 給電電圧を上げることにより課題解決を図る高電圧直流給電システムを紹介した。
 最後に,最近開発が進む高耐圧で高速・低損失なSiC半導体素子による,パワールーティングという給電系の変革の可能性を示した。

ICT機器用電源装置の高効率化の現状

EHS&S研究センター上級技師 エネルギー技術部担当部長 村上直樹

概要:
 ICT機器やデータセンターなどの消費電力に与える影響が大きい電源として、サーバー内で使用される電源装置(PSU)と、ICT機器へ給電する外部電源装置であるACアダプタ、 UPSおよび整流装置を取り上げ、高効率化の現状を紹介する。電源装置を高効率化するには、わかりやすい道標を作りその基準値を段階的に引き上げるのが効果的である。 その道標として大きな役割を果たしている米国作成の「エネルギースター」、サーバー内蔵電源専用の「80PLUS」、国内ICT機器関連団体作成の「ICT分野におけるエコロジーガイドライン」について、評価指標と基準値を詳細に紹介する。 次にその指標と基準値により高効率を達成した電源装置の効率特性を紹介し、ACアダプタでは効率90%以上、PSU・UPS・整流装置については負荷率の広い範囲にわたり効率95%以上が得られていることを示す。 また、一部のUPSでは運転モードによっては98%に達している。さらに、ICT機器の動的制御などが進むと、電源は軽負荷になることが多くなるため、軽負荷時の一層の効率向上が図られている。
 本稿では、これらの電源装置の評価指標とその基準値、それに適合する最新製品の高効率特性を紹介する。

太陽光発電システムからの電磁妨害波規制の技術動向

EHS&S研究センター上級研究員 エネルギー技術部担当部長 山根 宏

概要:
 省エネやエネルギー資源の安定供給の観点から、再生可能エネルギーへの期待が高まる状況下で、太陽光発電システムの大量導入が進められている。 この大量導入の背景やその状況について述べるとともに、住宅内に敷設された場合、他の家電機器とのEMC的影響,大規模太陽光発電システムをエネルギー発生源としてした場合のエネルギー管理システムへのEMC的影響の可能性から、 国際標準化機関での太陽光発電システムからの放射、伝導妨害波許容値の状況について述べている。 さらに、国際標準化機関で検討中の規格値について、「大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証試験」のプロジェクトにおいて、北杜メガソーラープロジェクトにて、電磁環境を測定・評価した結果について述べている。

建築構造設計分野におけるBIMの動向

EHS&S研究センター上級研究員 建築構造技術本部長 齊藤賢二
マーケット開発部長 奥村幸司
構造設計システム部担当部長 平賀 章

概要:
 近年、設計業務や積算・施工業務におけるBIM(Building Information Modeling)の活用が話題になっている。 たとえば、意匠データを中心とした建物モデルを用いて、設計内容の可視化によりオーナへのプレゼンテーション等に効果を発揮している。 また、構造躯体データを中心とした建物モデルや設備データによる建物モデルの活用も推進されており、意匠・構造・設備の不整合あるいは干渉チェックや積算・施工情報へ展開されつつある。
 本稿では、構造躯体データを中心とした建物モデル(以下、構造BIM)活用の現状と課題について述べる。また、国内における構造計算ソフトとBIMソフトとの連携状況についても触れる。 最後に、構造計算プログラム「SEIN FAMILY」とBIMソフトとの連携状況について、SEIN−Revit Structureデータコンバータについて述べる。

BIMを補完する建築オープンソフトウェア環境

ユーザシステム開発部課長 森谷靖彦

概要:
 2009年に日本への上陸が始まったBIM(Building Information Modeling)も、いよいよ普及期を迎え、大手ゼネコンや組織設計事務所を中心にBIMソフトウェアの導入が加速し、実務実績も多く聞かれるようになった。
 BIMは、建物の3次元モデルにさまざまな属性情報を保持することが特徴である。 建物3次元モデルをデータベースとして利用し、建築計画から施工、維持管理まで建物のライフサイクル全般にわたって建物情報の一元管理をしようという試みがなされてきた。
 しかし、建築の各フェーズで必要となる情報や精度がそれぞれ異なることや、すべての情報を3次元モデルに持たせることでデータ容量が肥大し、パフォーマンスの低下が問題となるなど、多くの課題も見えてきた。 加えてBIMソフトウェアは一般に高価で操作も難しく、導入と習得に多くの時間とコストがかかる割に導入効果が見えにくいということも本格的な普及の妨げとなっている。
 このため、最近では統合的な“大きなBIM”から、設計のフェーズごとにさまざまなツールと連携して作業を進めるなど、“BIMの分化”が試されるようになった。

クラウド・スマート端末活用による現場保守、管理業務の効率化

オペレーション技術部係長 石川英昭
オペレーション技術部係長 今川能通

概要:
 スマートフォンやタブレットをはじめとするスマート端末の普及は著しく、スマート端末とクラウドサービスを組み合わせたソリューションサービスは現場保守作業の領域にも普及しつつある。
 しかし、多くの保守作業の現場では依然として紙をベースにした作業が根強く残っている。
 本稿では、現場保守作業を効率化するツールとしてスマート端末とクラウドの活用を検討した結果を報告する。
 活用検討は以下の流れで実施した。
 1)スマート端末向け、保守作業用の試作機能の実現
 2)試作機能を使った現地試験の実施
 3)現地試験の結果から見えた問題点、課題の整理
 試作機能は音声認識技術やGPS技術を活用して実現した。
 また、試作機能は作業効率化だけでなく、データ流出を防止する仕組みとしてデータ送信後は端末内のデータを消去するなど、セキュリティ面を考慮した機能とした。
 さらに、通信機能の利用が制限された場所での作業を想定した自動通信遮断/再開機能も本試作機能に組込んだ。
 現地試験の結果、保守作業場所では周囲の騒音や雑音により、作業者の発声内容が認識されない等、音声認識をはじめとする幾つかの問題点が浮かび上がった。
 今後は、現地試験の結果から得られた問題点・課題についての対策の検討を進めるとともに、さらなる効率化や技術継承、ノウハウ蓄積に役立つ技術検討を進める。

地震によるライフライン被害の想定と対策

建築FM技術部主任 今地裕介

概要:
 企業を取り巻く環境には、さまざまなリスクが存在する。企業活動におけるリスクは、自然環境の変化等により生じる外部リスクと企業内に潜在する内部リスクに大きく分けられる。東日本大震災を契機に、公的機関では外部リスクに値する各ハザードのリスク評価の見直しが検討されている。
 本稿では、建物施設に影響を及ぼすリスク項目のうち、地震により生じるライフライン被害についての想定と対策について報告する。

歴史的建造物の耐震診断と耐震補強の動向
−煉瓦造および鉄筋コンクリート造の事例−

EHS&S研究センター研究理事 赤木久眞
EHS&S研究センター上級研究員 構造コンサルティング部長 中野時衛
構造コンサルティング部係長 守屋慎一郎

概要:
 1960年以前に建設された50年以上経過した建物は、文化財の対象となる歴史的建造物である。登録文化財制度の普及とともに、歴史的建造物は都市再開発の重要な核となるとともに、一方で耐震改修を含む保存・活用が重要な課題となっている。
 煉瓦造および鉄筋コンクリート造(RC造)の歴史的建造物の保全に係わる耐震診断・補強を進めるにあたっては、歴史的建造物の改修には歴史的価値とオーセンティシティを損なわない補強技術が必要であり、安易な補強は控えるべきである。近年、機能確保の観点も満たす免震構法を採用しているケースが多くなっている。
 煉瓦造建築物は基本的には明治の中期から大正までの30年間、幕末の導入期を含めてもわずか60年の歴史しかない極めて特異な建造物である。その数もわずか600棟弱となっていて保存の機運が高まっている。煉瓦造の破壊は目地の離間による面外曲げ破壊が多く、RC造の建物と大きく異なる破壊性状を示す。
 煉瓦造の補強は従来コンクリート壁を内側に作って一体化を図る方法が多かったが、コンクリート中性化による鉄筋の腐食損傷およびエフロレッセンスによる煉瓦壁体の急速な劣化があることより鉄骨構造による耐震補強が最近、採用されている。
 RC造建物の補強は中性化の問題がある躯体の問題、仕上げ・外装と一体となっている躯体の補強は困難であることより改修工事が進んでいなかった。
 歴史的建造物の指定を受けている2つの建物について、オーセンティシティを損なうことなく、現行の耐震規定を満たす改修の実施事例を紹介した。

二次電池の進化と将来

バッテリー技術部担当部長 暖水慶孝

概要:
 20世紀後半から我々の生活は大きく変化を遂げている。物質的な充足から個々人の生活の快適さが望まれる社会に変貌してきた。また近年のエネルギー・環境問題は将来への重要な課題である。
 これら社会環境の変化に呼応するように、二次電池は進化してきた。
 二次電池を使用するスマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータをはじめとする携帯機器により利便性は格段に向上し、エネルギー・環境問題の解決策として電気自動車や家庭用蓄電設備といった、今までにない機器にも使用されるようになり、二次電池は人々の生活に不可欠なものになってきた。
 本稿では、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池の登場から現在までの進化の様子を3つの観点からまとめた。
 1点目は、販売数量、価格、販売された電池の容量の推移および二次電池使用機器の販売数量推移を関連付け電池系がどのように変化していったかについて考察した。2点目は、電池への要求特性と使用用途の分類を行い、市場に登場した時に使用されていた電池から現在使用されている電池への移り変わりについて、主要要求特性を軸にまとめた。最後に各電池系で進化を示す特徴的な技術の一端と新しく登場してきた用途の要求特性と市場での使われ方について述べる。

市販リチウムイオン電池の釘刺し試験法に関する考察(その4)

バッテリー技術部 磯部武文
EHS&S研究センター上級研究員 バッテリー技術部長 荒川正泰

概要:
 近年リチウムイオン電池の普及に伴い、携帯機器だけでなく電気自動車や航空機などさまざまな分野でリチウムイオン電池の不具合や事故が多発している。リチウムイオン電池は可燃性の有機電解液を使用しているため、起こり得る誤使用や過酷な使用環境を想定してさまざまな安全性規格が定められ安全性試験が行われているが、不具合・事故原因の一つと考えられている内部短絡を評価する試験は少ない。これまで我々は内部短絡に注目し試験を行い、報告を行ってきた。
 今回我々は内部短絡を模擬する釘刺し試験、強制内部短絡試験、Blunt Nail試験の3つの試験を行い、それぞれの試験の特徴および再現性・有効性を確認した。その結果、釘刺し試験は再現性のよい試験であるが釘刺し速度依存性が大きく、適切な試験条件を設定することが必要であることが分かった。また、強制内部短絡試験は試験方法が複雑であり、再現性に問題があることがわかった。Blunt Nail試験については比較的簡単に試験することができ、再現性がよく、内部短絡を評価するには有効な試験方法であることがわかった。