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公共施設等総合管理計画の実施

取締役 建築FM技術本部長 酒井 修

概要:
  公共施設等総合管理計画は2016年度までの3年間が作成の優遇措置を受けられる期間となっていて,各自治体が作成を進めてきた。 ほとんどの自治体は2016年度中に作成を終える見込みである。 計画の実施にあたって,主幹の総務省ではHPで各自治体の計画書の比較を可能とし,また先進的な事例を公表することにより,各地域のレベルアップを期待している。 地域住民がこのHPを確認することにより,容易に居住地域以外の自治体と比較することも可能であり,自治体の取組みも加速すると推察される。 また,国土交通省では,社会インフラの効率的な維持管理・更新のためのマニュアル作成や相談窓口整備に取り組むとともに,技術者確保のための資格制度の見直しなど効果的な支援を行っている。
  公共施設等総合管理計画作成にあたり,同時に個別施設計画を作成しておくと整合性の高い計画となるが,多くの自治体では公共施設等総合管理計画の作成を優先し,個別施設計画はこれからとなっている。 施設の劣化状況の判定等課題は残されている。

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知的生産性向上に向けたWELLNESSの動向〜OUTPUTの分解による知的生産性恒等式の提案〜

EHS&S研究センター上級技師 環境技術部長 塚田 敏彦

概要:
  日本の労働生産性は先進国中における低位が続いている。 また先進諸国の少子高齢化が進む中,日本はその先駆けになっており,これらの課題に対して,健康を経営課題とする考え方が浸透しつつある。 我々が90%以上の時間を過ごしている建築は,人間の身体的・精神的健康に及ぼす影響や果たす役割が大きく,ホワイトカラーにとってオフィスが主要な建築となる。
  本稿では上記の状況を踏まえて,以下の紹介や提案を行った。
  @経済産業省から出ている健康経営オフィスレポートでは健康経営オフィスの成果をアブセンティーズムとプレゼンティーズムの解消とし,そのために作成した7つの行動指標と17のチェック項目を示している。
  A米国では健康と快適性に優れた建物を認証評価するWELL Building Standardが運用開始され,今後飛躍的な普及が予想される。認証方法等はLEEDと類似しているが,WELL Building Standard独自の特徴もある。
  BCO2排出量と人類の活動の関係を表した式として,茅陽一東京大学名誉教授が提唱した世界的に有名な下記の「茅恒等式」がある。
   CO2排出量 = (CO2/エネルギー) × (エネルギー/GDP) × (GDP/人口) × 人口
  上式を参考にして,知的生産性を含むoutputの分解による下記の恒等式を提案した。
   output =(output/input)×(input/人・組織)×(人・組織/オフィス)×オフィス
  右辺の第1項は「知的生産性」,第2項はinputに関わる稼動の最小化であり「ICT化・ロボット化」,第3項はオフィスでの人・組織のパフォーマンスの最大化であり,具体的にはアブセンティーズム・プレゼンティーズムの低減や,作業環境向上による「健康・快適」,第4項はオフィスの性能確保・向上であり「Green Building」となる。

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APEC加盟国の建築基準と関連規格の整備・運用状況

EHS&S研究センター技師 耐震構造技術部課長代理 早川 輝

概要:
  建築基準は,建築物の敷地,設備,構造,用途等の最低基準を定め,建築物を利用する人々の生命,健康,財産を保護するための重要なツールである。 その他,材料の消費や温室効果ガス等の排出の割合が高い建設工事に対し,国や地域が資源保全と廃棄物削減目標を追求し,経済成長に伴うリスク管理を行うための主要な機会を提供する。 また,危険度の高い長期間の建設工事に対し,作業環境を整備して作業者の安全,安心,健康を維持させるとともに,専門技術者や作業従事者の能力を維持,向上させるための道標を与える。このように建築基準は,社会経済において重要な役割を担う。
  一方,世界経済のパワーシフトにより新興国において都市化が進むとともに,世界各国において気候変動の影響と見られる気象災害や,活動期に進入したといわれる地象災害が増加しており,社会が許容可能な建築基準の開発や適正な執行,運用の重要性が増している。
  このようなことを踏まえ,本稿では,建築法規に係るこれまで行われた国際機関の調査結果や最新動向を調査し,APEC加盟国(21カ国)の建築基準と関連規格の整備・運用状況を整理した。

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これからの停電対策〜停電対策に付加価値を〜

常務取締役 EHS&S研究センター上級研究員 エネルギー技術本部長 山下 骼i

概要:
  従来の停電対策は,停電事故の発生直後はその重要性が認識されるが,普段の生活に対して付加価値を生まないために長続きせず,社会全体に広がっていくとはいえない状況であった。 しかし2011年の東日本大震災では,それまで経験したことのない広範囲で長時間停電が継続し,停電が回復した後も福島第一原子力発電所事故をきっかけとした電力供給不足が続いたことにより,あらためて停電対策の重要性が認識された。
  最近の停電対策の新しい流れとして,太陽光発電の売電価格の低下をきっかけとして,太陽光発電と蓄電池の組み合わせによる自家消費優先の利用法や,停電リスク回避を住環境の向上として顧客にアピールできる環境が整ってきた。 またコミュニティ単位でエネルギー自立や停電時のバックアップを図ることで,個別の対策に比べて柔軟な運用とコスト低減の可能性も示されるようになってきた。 これら新しい流れが進展するためには,太陽光発電のグリッドパリティ越えや,蓄電・蓄エネデバイスのさらなる低コスト化,水素利用の拡大等が必要である。

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電力自由化の動向と新たな電力供給ビジネス展開

EHS&S研究センター上級研究員 エネルギー技術部担当部長 山根 宏
エネルギー技術部長 三野 正人

概要:
 (1)電力供給システムは,「発電部門」「送配電部門」「小売部門」で構成されているが,電力の全面自由化とは,これらの部門ごとに競争原理を導入して,企業が参入できるような体制をつくることである。
 (2)電力自由化先進国である自由化事例は,以下のような状況である。
  @米国においては,小売市場が自由化されているかいないかは,州によって異なっている。
  A英国においては,世界に先駆けて電力自由化を実施したが,現在では6大電気事業者に収斂している。電気料金は,自由化・民営化の進展に伴い1990年代は低下したが,2000年代半ばから急上昇している。
  Bフランスにおいては,EDFが独占的に電力供給を実施してきたが,送電,配電は法的分離され子会社化されている。
  C韓国においては,2001年に電力自由化が実施され,KEPCOの発電部門は6社に分割・子会社化された。電気料金は,政府が値上げ幅を抑え込んでいるため低い水準である。
 (3)日本国内においては,東日本大震災を契機としたや原子力発電所事故により,従来の電力システムの抱えるさまざまな課題が浮き彫りになり,@広域系統運用の拡大,A小売および発電の全面自由化,B法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保という3本柱からなる電力システム改革が,3段階に分けて進められた。
 (4)小売全面自由化に伴い,小売電気事業者(既存電力会社・新電力等)は,通信会社やガス会社など自社サービスの顧客基盤を抱える企業と提携して,収益向上を図ることが可能となった。

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リチウムイオン電池の釘刺し試験法における課題

EHS&S研究センター上級研究員 バッテリー技術部長 荒川 正泰
バッテリー技術部 磯部 武文

概要:
  何らかの原因で電池が発熱し温度が上がると,電池内でさまざまな反応が起こってさらに熱が上がり,熱的暴走いわゆる発火が起こる。 リチウムイオン電池において,内部短絡という危険モードは,保護回路では回避できないため,設計や工程管理とともに内部短絡に対する電池自体の耐性の評価が極めて重要となる。 本報告では,これまで詳細に検討してきた釘刺し試験法における知見をまとめるとともに,そのさらなる課題について議論する。
  釘刺し試験は試験条件の設定が困難で,たとえば釘刺し速度により結果が全く異なり,釘の先端形状や材質によっても試験結果が異なる。 しかし釘刺し試験には種々の課題があるにもかかわらず,その簡便さは魅力であり,試験を工夫することでより実効性の高い試験を実現できる可能性がある。 特殊な治具を用いた試験(ミツバチネイル短絡試験)は,スペーサーの大きさや,金属錐体の形状を最適化する必要はあるが,最外周に限った単層の短絡を実現できる可能性があると考えられる。 今後より詳細な検討を行い,実効的な釘刺し試験法の確立を目指したい。

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住宅分野の省エネルギーと快適性の両立に向けた技術動向

市場戦略サービス部係長 武田 史人

概要:
  住宅に対する国民のニーズとして,価格・費用の優先度が低下し,性能に重きが置かれるようになっている。 エコハウスに対しては,エネルギー消費量が少ないだけでなく,快適性を向上する住宅が必須である。
  日本では,2013年に「改正省エネルギー基準」が導入され,2020年以降はすべての新築宅にこの基準が義務づけられる。 経済産業省では,ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)ロードマップとして2020年までに新築住宅の過半数をZEHとすることを政策目標として掲げ,以下に述べる高性能建材,高性能設備機器,蓄電池等の導入を支援している。
  省エネルギーの取り組みとして,断熱性と気密性の向上に向けた取り組みが重要となる。 特に断熱性に影響を与えるのは窓であり,国内の新築戸建ての複層ガラスの普及率,遮蔽タイプのLow-Eペアガラスの普及率は年々高まっている。 一方で,窓の断熱性能で最も影響のある窓枠は,国内の窓枠の8割以上が熱伝導率の高いアルミ製であり,断熱性を考慮し樹脂あるいは木質サッシが主流の欧米と比べ遅れをとっている。
  太陽光発電システムは,余剰買取価格の下落で,電力の自家消費の節減を目的に設置されることが多い。 太陽光発電パネルは屋根置き型と屋根一体型があり,設置費用面,外観,メンテナンス性等で一長一短がある。
  太陽熱利用システムは,太陽光発電と比べて普及率は高くないものの,エネルギー利用効率が高い。
  床暖房システムは室温にムラが生じにくく,足部の冷えがない等,快適性に利点がある。ただしコスト面を考えると,高断熱,高気密の住宅で成り立つものである。
  家庭用燃料電池は熱と電気の両方のエネルギーが活用でき,エネルギー利用効率は85〜95%と高い。 価格も年々下落している。 現在は停電時発電継続機能を内蔵したモデルや,電気や熱の利用時間に合わせて発電運転時間を決定する学習機能を搭載した機種も現れた。
  HEMS(家庭用エネルギー管理システム)は自社製品を中心に接続されることが多いが,標準通信規格であるECONET Liteに基づき,異なるメーカーの住宅設備や家電を接続できるようにする動きがある。
  IoTによるイノベーションが推進される一方で,情報セキュリティ面でも安全の確保に取り組むことが必須となっている。

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空調用冷媒の動向

EHS&S研究センター研究主任 環境技術部 海藤 俊介

概要:
  近年,地球温暖化問題から高GWP(Global Warming Potential:地球温暖化係数)冷媒を巡り,国際的に規制強化の動きが高まっている。 オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書について2016年10月にルワンダ・キガリでモントリオール議定書第28回締約国会合(MOP28)が開催された。 この会合では現在,代替フロンとして広く使用されているハイドロフルオロカーボン(HFC)の生産および消費量の段階的削減義務等を定める本議定書の改正(キガリ改正)が採択された。 これを受けて現在,日本政府はHFC生産規制に関する法律の整理を進めている。 このように世界的に高GWP冷媒の規制強化が進められていることから,今後ますます代替フロンから低GWP・ノンフロンへの冷媒転換が進んでいく状況にある。
  低GWP冷媒の冷媒転換には,低GWP冷媒の微燃性の安全性についての課題がある。HFC系冷媒は不燃性であったが,低GWP冷媒候補の冷媒の多くが微燃性である。 低GWP化と可燃性についてはトレードオフの傾向があり,燃焼性についての安全性の確保が求められている。
  空調用冷媒の低GWP冷媒候補は多数挙げられているが,将来的にどの冷媒が主流となっていくのか見えていない。

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都市とセンシング

EHS&S研究センター長 情報システム技術本部長 大島 一夫

概要:
  2050年には世界の人口の66%が都市で生活するようになると予測され,今後35年間でさらに25億人が都市に加わることになる。 都市部の人口の増加は,インフラ,資源,エネルギー,交通,環境,治安等の問題を引き起こすことになる。 これらの問題に対処するとともに,新たなイノベーションの創出,開発途上国への展開を狙いとして,世界各国,各都市でスマートコミュニティなどさまざまな取り組みが行われている。
  スマートコミュニティ・インフラストラクチャについて,ISO TS 37151「性能評価指標の一般原則と要求事項」が発行されている。 国内では,経済産業省のスマートコミュニティ導入事業が行われた。 欧州では,欧州委員会が2015年にHorizon2020においてスマートシティ実証を行うための予算措置を行った。 米国では,2015年にスマートシティイニシアチブが公表され,スマートシティのための新技術を支援している。各国・各都市での取り組み例を以下に示す。
  英国グラスゴーでは,各種センサーが内蔵されたインテリジェント街路灯の設置,ノルウェー・オスロでは,市民が参加する大気汚染の計測を行った。 米国シカゴでは,騒音,交通量,大気汚染レベルを計測するため,500地点以上にセンサーノードの設置をすすめている。 国内では携帯電話の基地局エリアごとの人口を推計するサービスがある。 路面の段差や階段位置などを収集するために,スマートフォンを持って歩くだけで,路面の状況を抽出する技術の開発も進められている。 騒音には日本人には親しみのある虫の音なども含まれている。 昆虫の鳴音を抽出し,地図上にマッピングする技術,Googleストリートビューを利用して緑比率を求める技術が開発されている。 廃棄物の収集を効率的に行うためのセンシングも始まっている。 このように都市で行われている各種センシングとビル内で集められているデータと連携することによりさらに効果的な都市問題の解決が可能になると考える。
  センシング対象が増え,時間軸,空間軸での解像度もあがったデータを効率よく収集・分析するには,プラットフォームやインターフェースの統一,情報セキュリティへの配慮,AIなどの分析手法の高度化などが必要になる。 これらにより,安全で,地球環境に配慮した,住み心地のよい都市に変化していくことを期待する。

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建築業の生産性とBIM

ユーザシステム開発部担当部長 森谷 靖彦
ユーザシステム開発部 江藤 久美子

概要:
  建設業は他の業種に比べて労働生産性が低く,労働集約型産業の代表だといえる。 その根本的な原因の一つとして,非常に多様な利害関係者が介在するという産業構造がある。 建築設計業務だけでも,建築設計,設備設計など,専門領域が細分化され,さらに基本設計から実施設計,施工,運営・維持管理まで,そのプロセスごとに業務主体が分離されていることが多く,共有作業をミスなく行うことが難しい。 また建設技能労働者の高齢化や深刻な人手不足も原因の一つである。
  これらの問題を解決するため,管理業務や現場のICT化,CADの活用がはじまっている。 またこれまでCADの延長技術として捉えられていたBIMは建物のライフサイクル全般にわたる情報を一元管理し,情報の共有と協業の拡大に資するコミュニケーションツールの一つであると捉えられてはじめており,労働生産性を改善するためのプラットフォームとして認識されるようになった。

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寄稿:保全業務の繁忙が故障・不具合の平均修復日数に与える影響からの保全体制の検証方法

EHS&S研究センター研究アドバイザー 高草木 明

概要:
  ビルメンテナンス員は故障・不具合対応と、光熱水費管理、廃棄物管理などの業務を担っている。 平均修復日数は保全の業務品質を測る尺度といえることは明らかである。 これを高水準に維持するためには、保全員数が多いほどよいが、これは人件費とトレードオフとなる。
  発生した故障・不具合は、即日修復が完了するものと翌日以降に持ち越されるものとに大別される。 故障不具合の新規発生数と過去に発生した故障不具合で修復未完了のものへの対応件数(発生後と完了前の保全稼働を含む)によって保全負荷を定義した。 保全負荷は保全員の繁忙度の尺度と考えられる。 A病院の保全記録データに基づき保全負荷と持越し率の関係を示した。
  持越し率に影響する主な要因を7項目挙げた。 保全負荷に関わる2項目と保全員の勤務数が繁忙要素であり、他の技術的要素など4項目は非繁忙要素である。 7項目の内、保全員の勤務数だけが保全計画の対象となり、既存の保全現場の主な評価対象といえる。
  保全品質として重要なのは、平均修復日数であり、これは持越し率に依存し、これに影響する要素は、即日完了要素、非繁忙要素、繁忙要素である。 この繁忙要素の、A病院の場合の大きさを実態データに基づき計算し、A病院の保全体制の妥当性(保全員勤務数の不足が認められないこと)を検証した。

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